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Channel: ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲
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The Four J's "Here Am I Broken Hearted" 1964

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ロックへの視点.gif昨年暮、ダンボール箱の本を整理していたらちょっと懐かしい本が出てきた。パラパラめくっていると紙が一枚ハラリと落ちてきて、何だろうと思って見たとたん、さらなる懐かしさが込み上げてきたのだった。

まず、その本について紹介しておく。
昭和47年(1972)に音楽之友社から出版された「ロックへの視点」。中村とうよう、三井徹の両氏によるカール・ベルツ(Carl Belz)の”The Story Of Rock”(1969)の全訳である。訳者の中村とうよう氏はあとがきで「学問的な体系をもったロックの本格的研究書の草分け的存在」と評価していた。
当時、1950~60年代のアメリカ音楽に夢中になっていた私にとって、この本はそれらの音楽を概括的、歴史的に把握するための拠りどころであった。また、巻末の参考レコード(1953-1963)のリスト(300余曲)はエアチェックや音源収集のための指針と言ってもよく、ずいぶん活用させてもらった。

さて、そのハラリと落ちてきた紙とは、手書きコピーで、タイトルに「懐メロコンサート 予定曲」とあり、50余りの曲名と歌手・グループがリストされたもの。右肩余白に「昭和46年(1971年)9月11日」と記され、曲名の頭に何やら記号で私がメモした形跡があった。

この日、私は東京・銀座の山野楽器で開催された「懐メロコンサート」(レコード・コンサート)に参加したようだった。もう40年近く前のこと、会場の雰囲気などはほとんど憶えていない。同好の友人K君と一緒に行ったんではなかったっけ。
主催は「ミュージック・ライフ」(1998年に休刊)を発行していた新興音楽出版(現シンコーミュージック・エンタテイメント)だったと思う。若い男性社員二人がレコードを回しながら曲やアーティストの解説をしてくれたことを憶えている。

さて、どんな曲を聴かせてもらったのか、曲目リストから一部抜粋して、手書きコピーのとおり記しておく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

懐メロコンサート 予定曲(曲目 変更の可能性極大)

◎ R&Bコーナー
 ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー(ドリフターズ)
 デューク・オブ・アール(ジーン・チャンドラー)
 ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム(サム・クック)
 スタンド・バイ・ミー(ベン・E・キング)
 内気な17才(エセックス)
 ロコモーション(リトル・エバ)
 テル・ヒム・アイム・ノット・ホーム(チャック・J)
 ・・・・・(以下省略)

◎ ロッカ・バラード・コーナー
 内気なジョニー(ジョニー・ソマーズ)
 プリンセスではないけれど(ペギー・マーチ)
 涙のバースディパーティ(レスリー・ゴーア)
 カム・バック・トゥ・ミー(ロイ・オービソン)
 トラベリン・マン(リック・ネルソン)
 ジョニー・エンジェル(シェリー・フェブレー)
 燃ゆる想い(ジャミー・クー)
 ・・・・・(以下省略)

◎ その他 ホット・ロッド、サーフィン特集

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

リストを眺めると、オールディーズとして有名すぎる、言わば耳タコ曲ばかり。リアルタイムでよく聴いた大ヒット曲が多いけれど、当時、ラジオのFEN(米軍極東放送、現AFN)でしか聴けない本場のヒット曲もちらほら。選曲が幸運にも当時の私のお気に入り曲ばかりだったようで、会場での私の興奮がちょっと甦ってきたりもする。このリストには当時のお気に入り曲に「A」という印をつけたようだ。それほど多くないが、書き出してみると、私のいちばん好きなタイプがよくわかろうというもの(笑)。

 ゼア・ゴーズ・マイ・ベィビー(ドリフターズ)
 デューク・オブ・アール(ジーン・チャンドラー)
 ハンディ・マン(ジミー・ジョーンズ)
 Mr.ブロークンハーテッド(フォージェイズ)
 バタフライ・ベィビー(ボビー・ライデル)
 オーバー・ザ・マウンテン(ジョニーとジョー)
 可愛いドンナ(ダイオン)
 レッツ・ゴー・ストーリ(クレイグ・ダグラス)
 クライ・クライ・クライ(ジャック・スコット)
 涙の日記(バリー・ダーベル)
 コーヒー・デイト(エディ・ホッジス)

このコンサートで初めて聴いたのは「Mr.ブロークンハーテッド(フォージェイズ)」と「バタフライ・ベィビー(ボビー・ライデル)」の2曲。すっかり私のお気に入りとなって、当時、必死になって音源を探したものだった。

The Four J's.jpg今回は、そのうちの1曲、「Mr.ブロークンハーテッド(フォージェイズ)」を採りあげてみた。
この曲、「ミスター・ブロークンハート(Here Am I Broken Hearted, 1964))」は典型的なホワイト・ドゥー・ワップ(White Doo Wop)曲。1963年末に録音、64年発売と、ホワイト・ドゥー・ワップ全盛が1960年前後のことだから、あまりに遅すぎる新譜。アメリカではビートルズ(The Beatles)らブリティッシュ・ロック全盛を迎えようとしていた時代だ。やはりヒット・チャートにランク・インした記録は見つからない。日本では昭和39年(1964)にキング・レコードから「ミスター・ブロークンハート/恋されて」(HIT-312)のシングル盤が発売された。ラジオで聴いた記憶もなければ、ヒットした形跡もない。どうやら「遅れてきたドゥーワップ」のようであった。

このフォー・ジェイズが結成されたのは、たぶん1959~60年のことと思われる。フィラデルフィア出身の4人組。フランキー・アヴァロン(Frankie Avalon)とともにチャンセラー・レーベル(Chancellor)のドル箱・スターで、後に青春(コメディ)映画の人気スターとなったフェビアン(Fabian)の専属バック・コーラスとしてデビューした。当初はファビュラス・フォー(The Fabulous Four)と名乗り、コンサート・ツアーなどに同行していた。この間(1960~62)、チャンセラーから7枚のシングルをリリースしているが、ヒットはなかったようだ。フェビアンの映画界転向にともない、彼らはジャミー・レーベル(Jamie)に移籍、「ミスター・ブロクンハート」を含む2枚のシングル盤をリリースしたがヒットしなかった。その後のこのグループについては不明である。

以下、判る範囲でフォー・ジェイズのディスコグラフィーを記しておく。当時のドゥー・ワップ・グループは、メンバー交代、グループ名変更、レーベル移籍、同名異グループの存在などの事情で確かな情報を提示しにくい。また、ほとんど情報はないのだけれど、たとえ断片的な情報があってもあまり信用できるものではない。もはや不確かな情報を網羅せず、私の判断で、たぶんそうであろうと思われる情報のみ記述させていただく。

The Fabulous Four
Mister Twist / In The Chapel In The Moonlight (Chancellor 1062) 1960
Let's Try Again / Precious Moments (Chancellor 1068) 1961
Sounds Of Summer / Why Do Fools Fall In Love (Chancellor 1078) 1961
Betty Ann / Prisoner Of Love (Chancellor 1085) 1961
Everybody Knows / I'm Coming Home (Chancellor 1090) 1961
Everybody Knows / Mister Twist (Chancellor 1098) 1961
Forever / It's no Sin (Chancellor 1102) 1962

With Fabian
The love that i'm giving to you / You're only young once (Chancellor 1079) 1961

The Four J's
Here Am I Broken Hearted / She said that she loved me (Jamie 1267) 1964
By Love Possessed / My Love My Love (Jamie 1274) 1964

「ミスター・ブロークンハート」は、「クライ(Cry, 1951)」や「雨に歩けば(Just Walkin' In The Rain, 1956)」などの大ヒットで日本でもよく知られているジョニー・レイ(Johnnie(Johnny) Ray)の1952年ヒットの同名曲カヴァーである。ジョニー・レイの歌がオリジナルかどうかわからないが、フォー・ジェイズによるドゥー・ワップ・アレンジはとても同じ曲とは思えない。参考までにYoutubeからジョニー・レイ版もアップしておくので聴き比べてみてほしい。

Here Am I Broken Hearted, 1964


(参考)Johnnie Ray, 1952




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