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Channel: ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲
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The Cinderellas "Yum Yum Yum" 1959

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The Cinderellas.jpgYouTubeは、懐かしい曲とともに当時の貴重なフィルムや写真などあってけっこう楽しめる。でも、実物のドーナッツ盤写真のみの動画も多い。これらは、曲以外の情報がない場合もあるのだろうけど、しばしばレコード・コレクターである投稿者ご自慢の収集品展示であったりもする。興味のない人にはちっとも面白くないのだけど、マニアやコレクターには垂涎の的ともいうべきレコード盤の映像なのかもしれない。

さて、記事としてまだアップできずにいる何編かの書き止(さ)し原稿を持て余しながら、安直に記事にできそうな曲/アーティストはないものかと新着動画をチェックしていたら、オヤっという曲に出会った。シンデレラス(The Cinderellas)の「ヤム・ヤム・ヤム(Yum Yum Yum)」の投稿動画。聴きながら思い出したのは、70年代中頃オールディーズ・ファン・クラブに出入りしていた頃に交わした主宰者との会話。この曲の日本盤シングルを聴かせていただいたとき、私は初めて聴いたにもかかわらず「この曲けっこうヒットしたんでしょう?」と訊いた。すると彼は、ニヤリとして「それがゼンゼン」と言った。驚いた私はなんでヒットしなかったのかと問うたが、それは無意味な質問で、そのまま30年以上も経ってしまった。そして今、YouTube で再会し、また、なんで埋もれちゃったのかなと思いを馳せたりしたが、リリースが1959年と意外に古いことに気づき、なぜヒットしなかったのかピンときたのだった。

まだロックンロール熱の醒めやらぬ1950年代末、アメリカン・ポップスは大きな転換期を迎えていた。暴力と反抗のロックンロールは影をひそめ、替わって甘ったるい恋愛賛歌が蘇生、ポップ・ミュージックの復活である。従来の白人の伝統的なアメリカン・ポピュラー音楽がよりドリーミーに、よりポップになり、ティーン・サウンド新時代を迎えようとしていた。
1959年前後はその過渡期。ちょっとチグハグではあったけど、ユニークな曲がヒット・パレードを飾り、来たる時代を先導し活躍する歌手やプロデューサー、ソングライターが多数輩出した。たとえば60年代に一時代を築いたフィル・スペクター(Phil Spector)であり、バリー・マン(Barry Mann)、キャロル・キング(Carole King)、ニール・セダカ(Neil Sedaka)らのブリル・ビルディング(Brill Building)派、あるいはアルドン・ミュージック(Aldon Music)の面々など。
60年代に入ると、アメリカン・ポップスは多様化とともに全盛期へ。ヒットパレードはアイドル歌手らのたわいないワン・パターンのティーン・サウンドで埋め尽くされ、いよいよ爛熟期へ。そして、ビートルズ(The Beatles)らブリティッシュ・サウンドの世界的台頭で、栄耀栄華を極めたアメリカ・ポップスは朽ち、ロック新時代への幕開けとなる。
ティーン、ガール・ポップが咲き乱れたアメリカン・ポップス爛熟期(あるいは黄金期だったのかもしれないが)、コア期間は1961~63年で、日本では大体その1年遅れ。短命であったが、独特のドリーミー・サウンドはなんとも懐かしく、オールディーズ・ファンを情緒的な気分にさせる。
シンデレラスの「ヤム・ヤム・ヤム」という曲、その屈託のない歌声を聴いた私は、まさにその時代のヒット曲に違いないと思い込んでしまったのだ。

さて、白人系ガール・グループに限って、1950年代末期という時代を俯瞰してみると、フォンテーン・シスターズ(The Fontane Sisters)、デ・カストロ・シスターズ(The De Castro Sisters)、マックガイア・シスターズ(The McGuire Sisters)、コーデッツ(The Chordettes)、ポニー・テールズ(The Poni-Tails)らが活躍していた。ドリーミーなポニー・テールズの「もう少し早く生まれたかった(Born Too Late, 1958, 全米7位)」や、ソーダ・ポップなコーデッツの「ロリポップ(Lollipop, 1958, 全米2位)」など大ヒットしたが、彼女らの他の多くの曲は、まだ従来の伝統的なポピュラー・ソングの域を出ていなかった。

同時代にデビューした白人女性3人組・シンデレラスも「ヤム・ヤム・ヤム」以外の曲には、(YouTube で聴いていただければ)同様の印象を持たれるだろう。逆に言えば、「ヤム・ヤム・ヤム」は1962~63年であったら受け入れられただろうに、時代を先取りしたため注目されなかったということになる。デビューが「早すぎた」ガール・グループだったのかもしれない。
他に、同じく「早すぎた」ガール・グループを考えると、1959年にデビューしたデリケイツ(The Delicates)とスターレッツ(The Starlets)がいた。チャーミングな何曲かを発表したがヒットに至らなかった。しかし、この2つのグループは合体してエンジェルス(The Angels)となった。エンジェルスは、1963年に「わたしのボーイフレンド(My Boyfriend's Back)」の大ヒットで全米に知られることとなった。
反対に、1963~64年期、ポップスからロックの時代へと移行する頃デビューした「遅すぎた」グループもいた。いずれにせよ、時代の若者、大衆の欲求にマッチしなければどんな曲もヒットしない、それが流行歌の宿命なのだろう。

シンデレラズというガール・グループは資料にほとんど載っていないし、ネット検索でも十分な情報を得られなかった。いくつかの情報の断片から、少なくとも2グループが別個に存在していることがわかった。

「ヤム・ヤム・ヤム」を歌ったシンデレラスは、ベルギー(?)出身の白人女性3人組で、デッカ(Decca)レーベルから2枚、コロンビア(Columbia)レーベルから1枚、計3枚のシングルをリリースした。

Yum Yum Yum / Mister Dee-Jay (Decca 30830) 1959
I Was Only Fifteen / You Never Should Have Gone Away (Decca 30925) 1959
Puppy Dog / The Trouble With Boys (Columbia 4-41540) 1959

もうひと組のシンデレラスは、"Chains, 1962"や"Don't Say Nothin' Bad, 1963"などヒットさせたクッキーズ(The Cookies)の別名義。
クッキーズはよく知られており、黒人女性3人組で、結成は1954年と古く、とくにアトランティック(Atlantic)レーベル時代の"In Paradise, 1955"をはじめとする何曲かのリズム・アンド・ブルース(R&B)はなかなか素晴しく、私のお気に入り曲。いづれこのブログで紹介したいと思っている。

Baby, Baby(I Still Love You) / Please Don't Wake Me (Dimension 1026) 1964

実際は、シンデレラスというグループのレコードはまだ何枚かあり、同名異グループなのか、上記2グループに集約されるのか、現在のところは不明である。

YouTube から、「ヤム・ヤム・ヤム」の動画をアップし、他3曲をリンク、また、参考までにクッキーズのシンデレラス名義の1曲をアップしておく。

Yum Yum Yum 1959


Mister Dee-Jay 1959
http://jp.youtube.com/watch?v=RSsP8qTqxbc

Puppy Dog 1959
http://jp.youtube.com/watch?v=yr4XisJV5b8&feature=related

The Trouble With Boys 1959
http://jp.youtube.com/watch?v=ogNSn5wkZeQ&feature=related

The Cinderellas (The Cookies) "Baby, Baby(I Still Love You), 1964"
http://jp.youtube.com/watch?v=04a_gOuItj4

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