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Channel: ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲
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The Shirelles の「ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲」

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Shirelles1.jpg日本では圧倒的にスプリームス(The Supremes)の人気が高く、黒人系ガールグループの代表的な存在だった。それはダイアナ・ロス(Diana Ross)の人気であり、歌唱力がずば抜けて素晴らしかったからだろう。しかし本国アメリカでの人気は、もしかしたらシュレルズ(The Shirelles)の方が勝っていたのではないだろうか。
ヒット曲の多さではスプリームスの方に軍配が上がるが、ヒットを放った時期が 2~3年早く、全米で初めて成功した黒人系ガールグループとしてのインパクトは大きかったはずだ。それに、歌の巧さはそれほどではなかったけれど、優しく温か味のある歌声には定評があった。

さて、シュレルズについて書く前に、1960年代前半の、アメリカ本国で一大ブームとなったガールグループ旋風について触れておこう。
もともと黒人系ドゥーワップ(Doo Wop)グループは圧倒的に男性が多く、1950年代の女性グループには The Delltones、The Queens、The Dreamers、The Joytones、The Hearts、The Cookies、The Queentones、The Chantels、The Bobbettes、The Clickettes、The Deltairsなど思いつく限り挙げてみてもこの程度しかいない(いや、探してみれば、まだまだいるのだろうけれど)。
ところが、50年代末から60年代初めにかけて、ドゥーワップ・ブームが下降線を辿る頃になると、黒人系のガールグループが台頭しはじめた。それは、ちょうど公民権運動の隆盛の時期と一致し、女権拡大の機運が起こった頃だった。
黒人女性グループの台頭は、50年代から活躍している上記先発組とともに、50年代末から60年代初めにかけて結成された本命組が合流し、ガール・グループの黄金時代を築くに至った。
本命組とは、冒頭のスプリームス(59年結成)をはじめ、今回記事の主役であるシュレルズ(57年結成)、1961年に結成されたマーヴェレッツ(The Marvelettes)、ロネッツ(The Ronettes)、クリスタルズ(The Crystals)、オーロンズ(The Orlons)、62年結成のシフォンズ(The Chiffons)らがおり、さらに The Ikettes、The Royalettes、The Dixie Cups、The Toys、The Jelly Beansらの後発組が続き、1960年代前半のアメリカン・ポップ・シーンを華やかに彩った。
しかし、1960年代前半、ビートルズ(The Beatles)やローリングストーンズ(The Rolling Stones)の登場は、60年代中期以降のアメリカン・ヒットソングの潮流を大きく変えていくことになった。同時に、黒人系ガールグループもリズム・アンド・ブルース(Rhythm & Blues)~ポップス(Pops)からソウル・ミュージック(Soul Music)~ディスコ(Disco Music)へと次第に変化していった。

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shirelles2.jpgシュレルズ(The Shirelles)は、1957年ニュージャージー州パサイック(Passaic)で結成された。高校の級友ばかりで、1968年以降に4人から3人に変わった以外メンバーはずっと同じだった。これは長命グループとしては珍しい。
メンバーの名前を記しておくと、ほとんどの曲でリードをとったのが Shirley Owens(Shirley Alston-Reeves)(1941/6/10~)で、他に Doris Coley Kenner(1941/8/2~2000/2/4)、Beverley Lee(1941/8/3~)、Addie“Micki”Harris(1940/1/22~1982/1/10)がいた。すでに2人亡くなっている。
当初、The Poquellosと名乗っていたが、その後 The Honeytunesに変え、級友の母親が経営する Tiara Recordsに吹き込んだ。その級友の母親とは Florence Greenbergで、後に Scepter Recordsを設立することになる。
Tiaraで“I Met Him On A Sunday / I Want You To Be My Boyfriend”を吹き込んだ頃には Shirleyの名前に由来するグループ名、The Shirellesに変えていた。
“I Met Him On A Sunday / I Want You To Be My Boyfriend”の版権を Decca Recordsに譲渡することにより、シュレルズは全国的にデビューを果たすことになったのである。“I Met Him On A Sunday”は1958年4月にビルボード・ヒットチャート49位を記録した。
上々のスタートを切った彼女らであるが、その後ヒットを得られず、Deccaとの契約は打ち切られ、Scepter Recordsに移籍することとなった。

Scepterでは、プロデューサー兼ソングライターの Luther Dixonと組みヒット曲を量産、快進撃を続けた。Scepterを離れる1966年までに、全米ヒットチャート20位以内のヒットを 7曲放ったことになり、とくに “Will You Still Love Me Tomorrow”が全米第1位に輝いたことは、黒人系ガールグループでは初の快挙となった。この曲は Gerry Goffinと Carole Kingの作品として有名。
その7曲を記しておくと、
“Dedicated To The One I Love(愛する貴方に)”全米ヒットチャート 83位(59/7)3位(61/1)
“Will You Still Love Me Tomorrow”全米ヒットチャート 1位(60/11)
“Mama Said(ママのご意見)”全米ヒットチャート 4位(61/4)
“Baby,It's You”全米ヒットチャート 8位(61/12)
“Soldier Boy”全米ヒットチャート 1位(62/3)
“Everybody Loves A Lover”全米ヒットチャート 19位(62/12)
“Foolish Little Girl(お馬鹿な可愛子ちゃん)”全米ヒットチャート 4位(63/3)
といった具合である。
シュレルズのヒット曲のほとんどは Scepterで放ったもので、26曲が100位以内にチャートインした。たぶん黒人系ガールグループではスプリームスに次ぐヒットメーカーと思われる。そして、この間に、多くのレコーディング・セッションや、有名アーティストとともにコンサート・ツアーに参加し、また、テレビや映画などでも活躍した。

シュレルズは、たぶん70年代中頃くらいまで音楽活動を続けていたと思われる。もしかしたらリバイバル・ショーに今だ出演しているかもしれない。しかし、60年代中頃以降のシュレルズはかっての勢いを失っていた。
ただ、ひとつだけ特筆すべきことは、長年の音楽活動の功績を認められて、1996年にロックの殿堂入りを果たしたことである。

The Shirelles の Discography
Singles
I Met Him On A Sunday / I Want You To Be My Boyfriend(Tiara-6112)(Decca-30588)1958/2
My Love Is A Charm / Slop Time(Decca-30669)1958
I Got The Massage / Stop Me(Decca-30761)1958
Dedicated To The One I Love / Look a here baby(Scepter-1203)1959/8,1961
A Teardrop And A Lollypop / Don't The Ronie(Scepter-1205)1959
I Saw A Tear / Please Be My Boyfriend(Scepter-1207)1960
Tonight's The Night / The Dance Is Over(Scepter-1208)1960.10
Will You Still Love Me Tomorrow / Boys(Scepter-1211)1960,1961/1
I Met Him On A Sunday / My Love Is A Charm(Decca-25506)1961
Mama Said / Blue Holiday(Scepter-1217)1961
A Thing Of The Past / What A Sweet Thing That Was(Scepter-1220)1961
Big John / Twenty One(Scepter-1223)1961
Baby, It's You / The Things I Want To Hear (Pretty Words)(Scepter-1227)1962/1
Soldier Boy / Love Is A Swingin' Thing(Scepter-1228)1962/5
Welcome Home Baby / Mama, Here Comes The Bridge(Scepter-1234)1962/7
Stop The Music / It's Love That Really Counts(Scepter-1237)1962/10
Everybody Loves A Lover / I Don't Think So(Scepter-1243)1963/1
Foolish Little Girl / Not For All The Money In The World(Scepter-1248)1963/4
Don't Say Goodnight And Mean Goodbye / Didn't Mean To Hurt You(Scepter-1255)1963/4
What Does A Girl Do / Don't Let It Happen To You(Scepter-1259)1963
It's A Mad Mad Mad World / 31 Flavors(Scepter-1260)1963
Tonight You're Gonna Fall In Love With Me / 20th Century Rock And Roll(Scepter-1264)1963
Sha-La-La / His Lips Get In The Way(Scepter-1267)1964
Thank You Baby / Dooms Day(Scepter-1278)1964
Maybe Tonight / Lost Love(Scepter-1284)1964
I Saw A Tear / Are You Still My Baby(Scepter-1292)1964
Shh, I'm Watching The Movies / A Plus B(Scepter-1296)1965
Let's Swing The Jingle For Coca-Cola(issued to radio stations only - Coca-Cola radio spot))1965
March (You'll Be Sorry) / Everybody's Goin' Mad(Scepter-12101)1965
Love That Man / My Heart Belongs To You(Scepter-12114)1965
(Mama) My Soldier Boy Is Coming Home・/ Soldier Boy(Scepter-12123)1965
I Met Him On A Sunday '66 / Love That Man(Scepter-12132)1965
Till My Baby Come Home / Que Sera Sera(Scepter-12150)1966
Shades Of Blue / After Midnight(Scepter-12162)1966
Shades Of Blue / Looking Around(Scepter-12162)1966
Teasin' Me / Look away(Scepter-12178)1966
Don't Go Home (My Little Baby) / Nobody Baby After You(Scepter-12185)1967
Too Much Of A Good Thing / Bright Shiny Colors(Scepter-12192)1967
Last Minute Miracle / No Doubt About It(Scepter-12198)1967
(以下省略)

Albums
Tonight's The Night(Scepter S-501)1961
The Shirelles Sing To Trumpets And Strings(Scepter LP-502)1961
Baby It's You(Scepter LP-504)1962
A Shirelles And King Curtis Give A Twist Party(Scepter LP-505)1962
Foolish Little Girl(Scepter LP-511)1963
It's A Mad Mad Mad World(Scepter LP-514)1963
The Shirelles Sing Golden Oldies(Scepter LP-516)1965
The Shirelles - Spontaneous Combustion(Scepter ST92187)1967
(以下省略)

じつは紹介する曲を5曲だけピックアップしようと考えていた。いろいろ聴き比べているとどうしても外せない気分になり、結局10曲になってしまった。それでもまだ10曲以上の甲乙つけがたい曲が残った。
これらの選曲はヒットしたものではなく、不発に終わったシングル曲、シングル・カットされなかった曲、はたまた未発表曲である。
これらの曲の並び順は、曲の素晴らしさとか好きな曲とかのランキングではなく任意に並べたものであることを申し上げておきたい。

Teardrop And A Lollypop, 1959
シングル盤(Scepter 1205)の A面。やや荒削りだけど、彼女らの才能をうかがわせる佳曲。


You're Under Arrest(1985)
CD盤“Lost & Find“からの未発表曲。哀愁のこもったなかなかの曲。未発表が信じられない。


I Dont Want To Cry, 1961
LP盤“The Shirelles Sing To Trumpet And Strings”に収録。シングルカットされなかったが、ヒットしてもおかしくないような出来。


I Saw A Tear, 1960
シングル盤(Scepter 1207,1292)の A面。ちょっぴり切なくて素敵な曲。


Plese Be My Boyfriend, 1960
シングル盤(Scepter 1207)の B面。ちょっぴり古臭いスタイル・演奏だが、こういう曲はたまらない。


Rainbow Valley, 1961
LP盤“The Shirelles Sing To Trumpet And Strings”に収録。シャーリーの悲しげで、何かを慈しむような歌い方は印象的。曲が途中で途切れるような演出も効果的だ。


The Twitch, 1963
LP盤“Foolish Little Girl”に収録。当時流行っていたダンス曲を意識してヒットを狙ったものだろうが不発だったようだ。こういった曲は、1963年にはちょっと遅かったかも。


Blue Holiday, 1961
シングル盤(Scepter 1217)のB面。クリスマス・ソングのようだが、素晴らしい出来で、この熱唱ぶりは第一級のレディ・ソウルだ。


Go Tell Her(1987)
CD盤“Lost & Find“からの未発表曲。これもシュレルズ節の素晴らしい曲だ。


My Love Is A Charm, 1958
シングル盤(Decca 30669,25506)のA面。2枚目のシングルで、初々しい歌い方やナレーションに好感が持てる。



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