最近、演歌を唄う黒人歌手が話題を集めているようだ。もの珍しさばかりではなく、力量を高く評価するファンもいれば、「日本人の心」をはたして表現できるのだろうかとイブカる向きもある。ソウル・ミュージックやブルースなど歌っている日本人歌手もいるのだからべつに不思議ではないが、世界のポピュラー音楽の中でマイナーな部類に属する演歌・歌謡曲に挑戦する初めての黒人歌手ということで注目を集めているのだろう。
また、黒人歌手が黒人音楽を演るとは限らないのに、演歌・歌謡曲を唄うと珍しがられるのは、黒人音楽が演歌・歌謡曲とはまったく異質なイメージを持たれているからだろう。
ところが、かなり以前から両者の類似性・共通性は語られてきたのである。
私にとって記憶に残るのは1960年代末のこと。和製ドゥー・ワップと言われ人気を博したキングトーンズと、ムード歌謡コーラス・グループ、内山田洋とクール・ファイブ。デビュー曲「グッドナイト・ベイビー」(1968)と、同じくデビュー曲「長崎は今日も雨だった」(1969)はともに大ヒットした。前者が黒人音楽を志向し、後者は演歌だったのに、私は同じような印象で聴いた。それぞれのリード・ヴォーカル、内田正人と前川清はともに米軍キャンプに出入りし、幼少からジャズ(その当時は、アメリカ音楽はすべてジャズと呼ばれていた)に親しんでいたということを知ったとき、さもありなんと思ったりした。
演歌・歌謡曲と黒人音楽の類似性・共通性は、たとえばコード進行が似ているとか、コブシを利かせた歌いまわしとか、何よりも民衆の心に熱く迫るものがあるとか、いろいろ言われていた。もちろん異論があることは承知だ。現在の私は、両者の音楽にそれほどの類似性・共通性があるとは思えないし、むしろ大きな隔たりや異質性の方がたくさんあるだろうと思っている。
さて今回は、黒人音楽のなかで、演歌・歌謡曲ぽいお気に入り曲を選んでみた。
黒人ドゥー・ワップに夢中になっていた頃、1974年だったと思うが、参加したオールディーズ愛好会の主宰者宅で聴かせてもらったのが表題曲の "M.T.Y.L.T.T."。その日本的な曲調にちょっとびっくりしたことを憶えている。それは、他の黒人音楽の中にも日本的なものに気づき発見する機会となった。しかし、それらを今聴いてみると、そうでもあるようなそうでもないような微妙な気分になる。つまり、よくわからなくなるのだ。
このドリーム・キングス(The Dream Kings)はかなりレアなドゥー・ワップ・グループで、予想どうりネット検索では見つからなかった。写真もなかった。ただ、"M.T.Y.L.T.T." が数種の海外のコンピCD盤に収録されていることがわかった。
ところが、ひとつだけこのグループを採りあげているアメリカ人のブログがあった。素晴しい曲を発見したとその思い入れが書かれてある。そして、このグループのリード・ヴォーカリストの息子と称する人物が連絡してくれとコメントを入れていた(http://erik1966route1.blogspot.com/2005/09/more-than-yesterday-less-than-tomorrow.html http://erik1966route1.blogspot.com/2006/06/mtyltt-revisited.html)。
このグループは、前身である The Drakes を1955年に結成し、57年にドリーム・キングスとグループ名を変更した。チェッカー(Checker Records)から唯一のシングル盤 "M.T.Y.L.T.T. / Oh, What A Baby" をリリース、シカゴ地区でローカルヒットしたらしい。"M.T.Y.L.T.T." とは、"More Than Yesterday, Less Than Tomorrow"の各単語の頭文字で、慣用句らしくうまく訳せないのだけれど、この文の前に"I Love You"を付けてみるとなんとなくわかってくる。なお、The Drakes についても調べてみたが、手許にあるディスコグラフィー・データブックに下記のように記載があった。
The Drakes
Let Them Talk (States - unreleased) 1955
Take A Giant Step (States - unreleased) 1955
The Dream Kings
M.T.Y.L.T.T. / Oh What A Baby (Checker 858) 1957
なんとなく演歌・歌謡曲ぽい黒人音楽を、比較参考のため、Sonny Knigt "Confidencial" 1956 と The Monitors "Our Schooldays" 1957 の2曲をアップするつもりだった。また、リトル・リチャード(Little Richard)、ジョニー・エース(Johnny Ace)、チャック・ウイリス(Chuck Willis)、サム・クック(Sam Cooke)らのそれらしき雰囲気の曲を俎上にのせて書いてみようと考えた。しかし、調べて書き出すとかなり時間を要するので別の機会にしたいと思う。
The Dream Kings "M.T.Y.L.T.T." 1957
また、黒人歌手が黒人音楽を演るとは限らないのに、演歌・歌謡曲を唄うと珍しがられるのは、黒人音楽が演歌・歌謡曲とはまったく異質なイメージを持たれているからだろう。
ところが、かなり以前から両者の類似性・共通性は語られてきたのである。
私にとって記憶に残るのは1960年代末のこと。和製ドゥー・ワップと言われ人気を博したキングトーンズと、ムード歌謡コーラス・グループ、内山田洋とクール・ファイブ。デビュー曲「グッドナイト・ベイビー」(1968)と、同じくデビュー曲「長崎は今日も雨だった」(1969)はともに大ヒットした。前者が黒人音楽を志向し、後者は演歌だったのに、私は同じような印象で聴いた。それぞれのリード・ヴォーカル、内田正人と前川清はともに米軍キャンプに出入りし、幼少からジャズ(その当時は、アメリカ音楽はすべてジャズと呼ばれていた)に親しんでいたということを知ったとき、さもありなんと思ったりした。
演歌・歌謡曲と黒人音楽の類似性・共通性は、たとえばコード進行が似ているとか、コブシを利かせた歌いまわしとか、何よりも民衆の心に熱く迫るものがあるとか、いろいろ言われていた。もちろん異論があることは承知だ。現在の私は、両者の音楽にそれほどの類似性・共通性があるとは思えないし、むしろ大きな隔たりや異質性の方がたくさんあるだろうと思っている。
さて今回は、黒人音楽のなかで、演歌・歌謡曲ぽいお気に入り曲を選んでみた。
黒人ドゥー・ワップに夢中になっていた頃、1974年だったと思うが、参加したオールディーズ愛好会の主宰者宅で聴かせてもらったのが表題曲の "M.T.Y.L.T.T."。その日本的な曲調にちょっとびっくりしたことを憶えている。それは、他の黒人音楽の中にも日本的なものに気づき発見する機会となった。しかし、それらを今聴いてみると、そうでもあるようなそうでもないような微妙な気分になる。つまり、よくわからなくなるのだ。
このドリーム・キングス(The Dream Kings)はかなりレアなドゥー・ワップ・グループで、予想どうりネット検索では見つからなかった。写真もなかった。ただ、"M.T.Y.L.T.T." が数種の海外のコンピCD盤に収録されていることがわかった。
ところが、ひとつだけこのグループを採りあげているアメリカ人のブログがあった。素晴しい曲を発見したとその思い入れが書かれてある。そして、このグループのリード・ヴォーカリストの息子と称する人物が連絡してくれとコメントを入れていた(http://erik1966route1.blogspot.com/2005/09/more-than-yesterday-less-than-tomorrow.html http://erik1966route1.blogspot.com/2006/06/mtyltt-revisited.html)。
このグループは、前身である The Drakes を1955年に結成し、57年にドリーム・キングスとグループ名を変更した。チェッカー(Checker Records)から唯一のシングル盤 "M.T.Y.L.T.T. / Oh, What A Baby" をリリース、シカゴ地区でローカルヒットしたらしい。"M.T.Y.L.T.T." とは、"More Than Yesterday, Less Than Tomorrow"の各単語の頭文字で、慣用句らしくうまく訳せないのだけれど、この文の前に"I Love You"を付けてみるとなんとなくわかってくる。なお、The Drakes についても調べてみたが、手許にあるディスコグラフィー・データブックに下記のように記載があった。
The Drakes
Let Them Talk (States - unreleased) 1955
Take A Giant Step (States - unreleased) 1955
The Dream Kings
M.T.Y.L.T.T. / Oh What A Baby (Checker 858) 1957
なんとなく演歌・歌謡曲ぽい黒人音楽を、比較参考のため、Sonny Knigt "Confidencial" 1956 と The Monitors "Our Schooldays" 1957 の2曲をアップするつもりだった。また、リトル・リチャード(Little Richard)、ジョニー・エース(Johnny Ace)、チャック・ウイリス(Chuck Willis)、サム・クック(Sam Cooke)らのそれらしき雰囲気の曲を俎上にのせて書いてみようと考えた。しかし、調べて書き出すとかなり時間を要するので別の機会にしたいと思う。
The Dream Kings "M.T.Y.L.T.T." 1957