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Channel: ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲
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The T-Bones“Pearlin'”1964

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dfde2801-cb6e-431c-ac27-809c3e23765f-0.jpg毎年この時期(初夏)になると聴きたくなるのがサーフ・インスト。行ったことも観たこともないのに、なぜか60年代のカルフォルニアの青い海を想起してウットリする。そして、ホット・ロッド、ドラッグなどのカー・レースをテーマとしたインスト曲にも興奮したり。
以前マーケッツ(The Marketts)について書いたが、今回はその弟分であるTボーンズ(The T-Bones)を採り上げてみた。じつはその中間にルーターズ(The Routers)という次兄がいて、3兄弟を形成している。これは、ジョー・サラセーノ(Joe Saraceno)が全面的に作・編曲、プロデュースをして売ったグループだからである(ただし、Tボーンズの初期のプロデューサーは Dave Pell)。もちろんサラセーノはこの3グループ以外にもいくつかのインスト・グループ、ヴォーカル・グループを手がけた。たとえばアストロノーツ(The Astronauts)、パーシー・フェイス楽団(Percy Faith Orch.)、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)、リンク・レイ(Link Wray)、それから一時期のヴェンチャーズ(The Ventures)などなど。

この3兄弟が素晴らしいのは、バックグラウンド・ミュージックとして最高の音楽環境を演出してくれることだ。
マーケッツには「アウト・オブ・リミッツ(Out Of Limits, 1963)」や「バットマン(Batman Theme, 1966)」、ルーターズには「レッツ・ゴー(Let's Go (Pony), 1962)、T‐ボーンズでは「ビートでOK(No Matter What Shape, 1965)」や「真っ赤な太陽(Sippin''n Chippin', 1966)」などの日本でもお馴染みの大ヒット曲がある。しかし、それらの曲は少々子どもっぽい作りで、すぐあきてしまい、私はあまり好きになれない。
ところが他の多くの曲は、地味であるけれど、Jazzyでカッコよい演奏で、この3兄弟の持ち味となっている。その持ち味とは、じつはスタジオ・ミュージシャンの安定感のあるリラックスした職人技から生み出された演奏なのである。

T-Bones2.jpgTボーンズには一応メンバーがいて、日本のシングル盤にはそのメンバーの写真が印刷されている。しかし、彼らはプロモーション用に集められた影武者で、実際にレコーディングしたのはプロのスタジオ・ミュージシャンであった。このことはマーケッツもルーターズも共通している。

51PM7DKA5SL__SL500_AA300_.jpgここで、鶴岡雄二著「急がば廻れ'99」(音楽之友社、2002)から少々長いけれど引用しておこう。

まず、Tボーンズがいかに下手なバンドで、実際はスタジオ・ミュージシャンによってレコーディングされていたかについて。
「 一九六七年のことだったと記憶している。アメリカのインストゥルメンタル・グループ、Tボーンズが来日した。一九六六年に録音した<シッピン・チッピン>(邦題「真っ赤な太陽」)が、アメリカでは売れなかったが、日本ではヒットしたことを受けたものだった。当時、中学生だったわたしは、テレビに出演した彼らのプレイを、自分のバンドのメンバーといっしょに見て爆笑した。中学生のわれわれと大差のない、お粗末なプレイだったのである。(中略)
どういうわけか、Tボーンズは声高に非難されることになってしまったが、考えてみると、一九六五年以降にテレビで見た来日バンドは、みな似たり寄ったりだった。すでに述べたアストロノウツはもちろん、サファリーズもいい勝負だったし、ビーチボーイズもひどかった。例外はヴェンチャーズとシャドウズだけだった。(後略)」

次に、Tボーンズの実態と戦略について。
「以上、マーケッツとルーターズという、大ヒットのおかげで比較的名の知られたグループの実態がどうなっていたかを見てきたが、Tボーンズもまた、同様の「手口」によって生み出された「商品」だった。前出のギネス六十年代音楽人名辞典は、Tボーンズについて以下のようにいっている。

このグループは一九六四年に、リバティー・レコードがサーフ・インストゥルメンタルのアルバムを録音するために考え出した。同社はこのグループのプロデューサーとして、以前にもルーターズというスタジオ・バンドによってインストゥルメンタル・ヒットを生み出した実績のあるジョー・サラシーノを雇った。スタジオ・バンドという性質上、Tボーンズのパーソネルはセッションごとに異なる。

 この記述を信じるなら(メンバーがアルバムごとに異なる、というのは正しい。リード・ギターはグレン・キャンベルだったりトミー・テデスコだったりするし、ハル・ブレインもすべてのトラックで叩いているわけではない)、Tボーンズは、サラシーノが考え出したルーターズやマーケッツとは異なり、サーフ・ブームに便乗して一稼ぎするために、リバティー・レコードが生みだしたプロジェクトであり、この分野で実績のあったサラシーノに話をもちこんだことになる。
 会社の思惑ははずれ、最初の三枚のアルバムからはヒットが生まれず、サーフ&ドラッグ・ブームの波には乗りそこなったが、波が退いたあとの一九六五年、サーフィンとはなんの関係もない、アルカ・セルツァーのコマーシャルをカヴァーした<ノー・マター・ホワット・シェイプ(ユア・ストマックス・イン)>が大ヒットすることになった。なにかに便乗しつづければ、いずれは売れることを証明しようとしたのか、翌一九六六年、サラシーノは、こんどはマーケッツの名義で、評判になっていたテレビ・ドラマ『バットマン』の主題歌をカヴァーして、またしてもヒットを手にする。(後略)」
さらにもっと引用すれば当時の音楽界の裏事情などがよくわかって興味深いのだけれど、Tボーンズの記述からは離れてしまうので、この辺にしておきたい。

参考までに、この時代(おもに1960年代)に活躍したスタジオ・ミュージシャンの一覧をこの図書から引用しておこう。たぶんこの3兄弟の演奏は、彼らスタジオ・ミュージシャンの手によるものだ。


スタジオ・ミュージシャン一覧
・ドラムス
ハル・ブレイン(Hal Blaine)、アール・パーマー(Earl Palmer)、ジム・ゴードン(Jim Gordon)、エドワード・ホール(Edward Hall)

・フェンダー・ベース
キャロル・ケイ(Carol Kaye)、レイ・ポールマン(Ray Pohlman)、ジョー・オズボーン(Joe Osborn)、ラリー・ネクテル(Larry Knechtel)、チャック・バーゴーファー

・スタンダップ・ベース
ジミー・ボンド(Jimmy Bond)、チャック・バーゴーファー(Chuck Berghofer)、ライル・リッツ(Lyle Ritz)、レッド・カレンダー(Red Callender)

・ギター
トミー・テデスコ(Tommy Tedesco)、ビリー・ストレンジ(Billy Strange)、グレン・キャンベル(Glen Campbell)、アル・ケイシー(Al Casey)、ジェームズ・バートン(James Burton)、ビル・ピットマン(Bill Pitman)、ハワード・ロバーツ(Howard Roberts)、キャロル・ケイ、レイ・ポールマン

・キーボード
リオン・ラッセル(Leon Russell)、ドン・ランディー(Don Randi)、アル・ディローリー(Al De Lory)、マイク・メルヴォイン(Mike Melvoin)、ラリー・ネクテル

Tボーンズのディスコグラフィ
(シングル盤)
That's Where It's At / Pearlin'(Liberty 55814) Jul.1965
No Matter What Shape (Your Stomach's In) / Feelin' Fine (Liberty 55836)Oct.1965 [全米3位]
Sippin''N Chippin' / Moment Of Softness (Liberty 55867)Mar.1966 [全米62位]
No Matter What Shape (Your Stomach's In)(Liberty LST-4-7439)Mar.1966 [Special Edition]
Wherever You Look, Wherever You Go, Everybody's Doing It / Underwater(Liberty 55885)May 1966
Fare Thee Well / Let's Go Get Stoned(Liberty 55906)Sep.1966
Balboa Blue / Walkin' My Cat Named Dog(Liberty 55925) Oct.1966
The Proper Thing To Do / Tee Hee Hee (My Life Seems So Different Now)(Liberty 55951)Mar.1967
No Matter What Shape (Your Stomach's In) / Sippin' N' Chippin'(United Artists Silver Spotlight Series XW068)1973

(LP盤)
Boss Drag(Liberty LRT-3345)1964.01
1. Rail Vette
2. Little Deuce Coupe
3. Big Daddy Stocker
4. Torque Rod
5. Drag City
6. Scorchin'
7. Shut Down
8. Boss Drag
9. Revvin' Buggy
10. Hey Little Cobra
11. Six Banger

Boss Drag At The Beach (Liberty LRT-3363)1964.05
1. Haulin' Henry
2. Pearlin'
3. White Water Wipeout
4. Hot Rod U.S.A.
5. Chopped Deuce
6. Competition Coupe
7. Takin' Gas
8. Five Over The
9. High Boy Hauler
10. Boss Woody
11. Bucket Seat Beauty
12. Thunder Road

Doin' The Jerk(Liberty LST-7404)1965
1. Bread And Butter
2. How Sweet It Is
3. Feelin' Fine
4. The Jerk
5. Downtown
6. Come On Do The Jerk k
7. Tra La La
8. Sidewalk Jerkin'
9. Beef Jerky
10. Can You Jerk Like Me
11. The IN Crown
12. Soda Jer

No Matter What Shape (Your Stomach's In) (Liberty LRP-3439 LST-7439)1966 [全米75位]
1. No Matter What Shape (Your Stomach's In)
2. Chiquita Banana
3. Fever
4. What's in the Bag, Goose
5. Moment of Softness
6. Let's Hang On
7. Sippin' 'n Chippin'
8. Don't Think Twice, It's All Right
9. Hole in the Wall
10. My Headache's Gone
11. Pizza Parlor
12. Lies

Sippin' 'N Chippin'(Liberty LRP-3446 LST-7446) 1966
1. Walkin' My Cat Named Dog
2. Tippy-Toeing
3. Time Won't Let Me
4. (I Can't Get No) Satisfaction
5. Forty Five (Colt 45 Theme) The T-Bones 0:00
6. Sippin''N Chippin'
7. The Phoenix Love Theme (Senza Fine)
8. What Now My Love (Et Maintenant)
9. Sure Gonna Miss Her
10. Cinnamon Shuffle (Mexican Shuffle)
11. Pretty Face
12. Spanish Flea

Shapin' Things Up (Sunset SUM-1119) 1966
1. The"In"Crowd
2. Shapin' Things Up
3. No Matter
4. Jump Down
5. Thunder Road
6. Downtown
7. Rumblin' Walk
8. Pick A T-Bone
9. Competition Coupe
10. Sound Of Beauty

Everyone's Gone To The Moon (And Other Trips)(Liberty LR(S)T-7471 LRP-3471) 1966
1. Paint It Black
2. Kicks
3. Hold On (I'm Comin')
4. Oh How Happy
5. Fare Thee Well
6. La Do Da Da
7. Let's Go Get Stoned
8. Balboa Blue
9 .Everyone's Gone To The Moon
10. Shangri-La
11. Fly Me To The Moon
12. How High The Moon


“Pearlin'”1964


“ビートでOK(No Matter What Shape (Your Stomach is In))”1965


“真っ赤な太陽(Sippin''n'Chippin')”1966


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